炎の柱も気にはなった。だが、倒れている深祈は優先したい。
「っ深祈!!」
駆け寄って、上半身を起こした。
「白華さん・・・。」
「大丈夫か?」
「はい・・・、でも秋一さんが・・・。」
深祈がその炎の柱に目を移したのを見て、白華もい厳しい表情をした。
炎を吐き出した青年も、警戒しながら呟く。
「なんや、やっぱろそうかいな・・・。」
秋一は柱の中心にいた。
炎に囲まれているというのに、少しも熱くない。身近な生活の中で見る火ではない。
これは炎だ。
その炎が秋一に語りかける。
“赤羽 秋一・・・”
深く、脳に焼け付くような声が聞こえたので、ゆっくりと目を開いた。
“我が炎を宿した者よ”
目の前の炎の中に紅い糸のようなものが複雑に組み合わさり・・・白華や深祈のような紋章に似たものが揺らめいていた。
“その宿をお前は受け入れるか?”
『分からない』
口は動いていない。心で秋一は意志を示した。
『ただ俺には・・・大切で、守りたいって思う人がいるんだ!』
“よかろう”
その紋章が再び糸に舞い戻り、秋一の額へとその紋章を刻んだ。
炎の柱が、だんだんと秋一の体に纏うように、収まっていった。
「目醒めたのか!?」
白華は戸惑いを隠せずにそう言った。
炎が治まっていく中、K部の梅子、由貴、中等部のふたりと呼びに行った淳が寮から出てきた。
「そんな・・・早すぎるわ!何があったの!?」
梅子はそう言ったが、この状況を答えられる者はいなかった。
“我が名は暁紅、炎を従える鬼。我はお前の力。我が力を欲するならば名を呼べ”
「・・・・・・暁紅・・・!」
秋一が意志を込めて呟くと、額に描かれた紋章がより一層、紅く輝いた。
その輝きに請おうするように、炎が紅く揺らめいて右腕に収束していった。
秋一は、心の奥底からこみ上げてくる衝動に導かれるままに、右腕を青年にみけて突き出した。
「馬鹿なっ、やめろ!宝元石を持たない状態で・・・っ!」
白華の制止の声も空しく、秋一の耳には入ってこなかった。ただひとつの思いに駆られる。
白華を・・・守りたい。
それは6年前の償いなのかもしれない。
今度こそ。今度こそ、俺の手で守るんだ。
「んなっ!?」
青年が声を上げたが、秋一の炎のほうが疾かった。
右手から発射された一筋の炎は、先の柱ほども大きく青年をこの柊寮前広場からふっとばすには十分な勢いを持っていた。
「うおおぅっ!!」
まともにその炎を浴びた青年は空高く舞い上がり、広場が小さくなっていくのを見ていた。
だが、忘れてはいけないのがこの青年も炎使いだといことを。地上50mは舞い上がった頃に、手に溜めた同量の炎を浴びせて、秋一の放った力を相殺した。
くるん、と一回転して小さくなった広場にいる秋一を見た。
「ま、最後のひとりが見つかっただけでも収穫やろ。」
青年はそう呟いて、真下の林の落ちる際、炎をぶつけて落ちる勢いを殺して去っていった。
「・・・あ。」
青年の姿が見えなくなったのを視認して、安堵したのか、秋一の額の紋章は消えて、その場に膝を付いて倒れた。
気を失う瞬間に白華を見た。
あぁ、俺が守ったんだ・・・と納得したように瞳を閉じて意識を手放した。
「・・・・・・深祈、平気か?」
「はい、大丈夫です。」
白華は、深祈の無事を確認して立ち上がると、秋一の傍に寄った。うつ伏せの状態だった体を仰向けに起こして、呼吸、脈、心拍を確かめる。
特に異常もなく少し、ほっとする。
寮前にいたほかのK部員も秋一の下へと駆けつけた。
「深祈!怪我はない?」
「うん、ありがとう。亜輝ちゃん。」
亜輝と呼ばれた黒髪の中等部生も深祈n無事を確かめた後、秋一を見た。
すべてのK部が秋一と白華を見守った。
「・・・特に身体的異常は無い。少し熱は高いかもしれんな。疲労しただけだろう。」
初めては極度の緊張により、身体的な異常を訴えることが多かったが、秋一にその症状は見られない。
自分は酷い恐慌状態に陥ったからな、と昔を思い出しそうになって白華は頭を振った。
「休ませよう。」
一般女子高生よりはかなり細く、どこに筋肉があるんだ、という生白い腕で白華は秋一を抱き上げた。
腕を肩に回し、柊寮に向かって歩き出した。
白華は、とてつもなく複雑な気持ちで秋一を見つめた。
第1話 終